Go Forward

~大学院長からのあいさつ~

社会を変えるプレイヤーになれ



大学院長  
博士(理学)

小川 知之 教授



  最近では当たり前のことになっているのであまり意識しませんが、日本の気象予報はとても精度がよく、多くの人に信頼されています。その優秀な気象予報にしても、ごく稀に、短期予報を完全に外すことがあります。そんな時、つい、「おかげでびしょ濡れになった」とか「そんなことなら旅行をキャンセルできたのに」と被害者気取りで批判してしまいます。しかし、「これほど予測能力の高い気象予報が外れるからには、何か深い理由があるに違いない」と考える人がいたら、これは大きなビジネスチャンスにつながるかもしれません。

  このようにトラブルから発想を転換することは、研究活動ではごくあたりまえのことです。一般に研究者はその活動の多くの局面で困難にぶち当たっています。困難である理由を見極めると新しい何かが見つかることがあるので、研究者は困難に遭遇することを、むしろ楽しんでいると言えるかもしれません。

  欧米の多くの企業では、研究者はもとより経営者にも博士号取得者が多いと言われています。経営トップが、革新的なデザイン思考を持っていると、それに必要な人材を目利きで迅速に獲得できるし、産業構造がシフトしつつある現代に企業が飛躍するためにとても有利なはずです。これは日本企業でも例外ではなく、これからは博士人材の需要が高まるのは必須です。

  現代社会においては、私たちの周りをめまぐるしいほど多くの情報が流れては消えてゆきます。それらは、見えないところで変化しているダイナミクスの末端もしくは射影にすぎません。その情報を受動的に見聞きしているだけではダイナミクスの変数(プレイヤー)になることはできず、傍観者で終わってしまいます。かつての高度経済成長期であれば、傍観者としても、「そこそこの幸せ」が得られたのかもしれませんが、これからは果たしてそうでしょうか。傍観者でそこそこの幸せを目指して失敗した場合、誰の責任にすればいいのでしょう。一方、プレイヤーとして面白さを体験しながらの失敗は、もちろん自己責任ですが、成功した時に得るものは大きいはずです。

  大学院で学ぶ理由は、まさに社会のダイナミクスのプレイヤーになるためなのです。プレイヤーであるためには情報の本質を見抜き、そこに新たな価値を創造する力を身につけなければなりません。大学院では、論文を読むことで専門的な研究に触れます。論文を読みこなすのは大変ですがそれによってその周辺の理解も自然に深まります。そしてもっと重要なのは、その中にまだ誰も気がついていない問題を見つけることです。このようなことは、自分一人でじっとしていてもなかなかできるものではなくて、同じように真剣に研究している仲間と情報交換・議論することで進展するものです。人間の脳は、本来、自由な創造能力を持っていますが、学べば学ぶほど固定観念に束縛されるのも事実です。専門がむしろ違う仲間と対話することで、問題に対する無数の解決策を自由に生み出す脳本来の力を呼びさませるのです。

  明治大学大学院では、グローバルに活躍しうる人材を育てられるため、しっかりとした研究活動を体験してもらうよう大学院教育をデザインしています。また他の研究科・専攻の学生と学べる融合プログラムも用意しています。人生100年と言われる時代です。大学院に進学して、もしくは社会人として大学院に戻り、博士前期課程の2年間、加えて後期課程の3年間、研究活動を体験し研究者ネットワークも拡げることは、人生のキャリアデザインに計り知れない影響を及ぼすはずです。